もっと言論のタマを装填してね。 

  • [2015/12/19 14:49]

雑司が谷に事務所を開設して一ヶ月。
会社的には1人事務所になってしまうということもあって、新事務所はAV監督のK*WESTと一緒に借りることにした。家賃を折半にすることで少し広めの部屋に引っ越すことが出来た。

普段はK*WESTと自分の2人きり。そこにときおり音声のHが編集の手伝いにやってくる。HとK*WESTは大学時代の映画サークルの先輩後輩という仲。Hがこの業界に入ってきたのもK*WESTの誘いがあったからである。
撮影現場での彼はきわめて優秀な音声スタッフなのだが、AVそのものにはさほど興味がないらしい。一度、「監督をヤル気はないのか?」と聞いてみたら、AVよりも映画の方がやりたいそうである。
実はK*WESTの制作会社にいるのも、K*WEST自身がAVにこだわらず映像制作をやりたいと言っているからで、来年は自主映画のようなものを作るつもりでいるらしい。特に映画興行の形態にこだわってるわけでもなく、YouTubeでの無料配信でもいいらしい。
K*WESTもまた映画好きの青年なのである。

とはいえ、この2人はすでに一般映画デビューをしている。しかも役者として。
映画サークルのK*WESTの同期には白石晃士がいて、Hも白石晃士のところで技術スタッフをやっていたことがある。そんな仲だったからということもあるのだろう。3人が出突っ張りの作品がある。


「バチアタリ暴力人間」(2010年公開)

次回、久々にボヤキでレビューを書くつもりだが、自分がこのことを知ってまず思ったのは、自分がこの作品にK*WESTが携わっていることを今にいたるまで全然、知らなかったことだ。2010年なんて、まだいっぱしのヘビーユーザーだった頃だ。しかもAVライターのまねごとのようなことも始めていた。
それなのにまったく覚えがない。
身の回りの映画好きの人間に聞いてみたら、白石晃士の作品ということもあってか「バチアタリ暴力人間」という作品を知るものが意外といて、それなりに知名度があることにさらにびっくりした。

今年もAV業界にとってさらに厳しい年になった。
DVD盤だけ見ると1タイトルにつき1000枚もいかないメーカーがほとんどの状況になってきている。
つまり見方を変えると、AVなんて1000枚売れた売れないの世界ということだ。
たった1000人である。実際にはダウンロード配信もあるのでもっと売り上げはいいのだが、それにしてもそんな程度の市場ということだ。
そんな狭い世界で、狭い世界だけに向けて話をしているというのは、なんと不自由なことなのだろう。外界への目を持たないものの創作物にどれだけの面白味が生まれるというのか。

二村ヒトシの本についてもそれが言える。書籍の世界ではすでに10万部も売れ、たくさんの知識人・言論人とも対談イベントをしているが、AV業界でそのことの意味を知っている人はそんなに多くはない。
國分功一郎も熊谷晋一郎も湯山玲子も枡野浩一もたぶん知らない。
これだけTwitterだのFacebookだのができて、四六時中、発信されているのに、名前は聞いていたとしてもどんな活躍をしている人なのか、よくわかっていない。

逆にどんなにAV業界の中で有名になったとしても、世間的にはまったく無名である。AVの世界なんて、AVのことしか話さない。どのAV女優がエロいだの、どんな企画が売れるだの、そんなのばかりである。
思想も哲学も、文化を創る覚悟もあまり見られない。いや、エロとはもともとそうしたものかもしれない。でもそれでは根無し草のコンテンツになってしまう。

考えてみればボヤキの小窓でやってきたことって、文化的な側面としてのエロを語ることだった。
少なくても自分のやりたいことはそういうことだ。
そうじゃなければ単なるAV屋になってしまう。別にAV屋でもかまわないのだが、単なるAV屋で終わるなら先は見えているだろう。
もっとアンテナを広げなければと思った。
もっと業界以外の人に会わなければ。

淫語魔に帰ろうと思うのだ。 

  • [2015/11/25 17:27]

今月の18日に新しい事務所の部屋が借りられて1週間たった。
まだ事務机も応接セットもないけれど、ようやく自分のお城ができた。
この場所から本来やりたかったことをはじめようと思う。

奇しくもこの日はMotheRsが最初に作品を発売した日。今から四年前の2011年11月18日のことだ。(DVDの公式販売日は25日だが、店頭売りスタートは18日からだった)。

紅蓮のアマゾネス ~泣き喚きながら逝かされる男たち~ EPISODE 01

MotheRs参加当初、自分の立場はあまり明確ではなかった。とりあえず企画会議に出て話を聞き、自分の意見を言い、作品によってはシナリオを書く。
このときには、すでにAVライターの仕事ははじめていた。だからAVに関してまったくの素人ということではないのかもしれない。だが観るのと制作するのとでは大違い。いきなり現場に放り込まれて、いったい自分に何が出来るのか、どんなことで貢献できるのか、気持ちが右往左往。まったくのアウェイであった。

しばらくは本業と二足のわらじ状態だったが、まもなく本腰を入れてちゃんと会社に所属することになり、途中、2人いたプロデューサーが自分一人になったりしてまったく帰れない日々が続く。
それから4年。いまでは撮影現場を組んだり、パッケージを作ったり、予算の交渉をしたりして、いっぱしのプロデューサーになった。
まったくゼロからスタートだ。とにかく勉強の日々だった。
そのうち手応えのある作品をリリースできるようになり、評価の高いヒット作にも携われるようになった。

だが、一つの仕事に徹することで失ったものもある。
落ち着いて長い文章を書いている時間がまったくできない。
特にプロデューサーを一人でやらなくてはならなくなったとき、それまでやっていたライターの仕事を断るようになった。いつしかブログも書かなくなり、書くとすればコピーと宣伝文とTwitterでのつぶやきぐらい。
文章には自信があった方だが、長いものは書いていかないとさび付いてくる。
そのことを最近強く感じるようになった。

もともとやりたかったのはプロデューサー業ではない。
文章。言葉の力で説明する。AVの現場でなにがおこっているのか、そこで行われることはことにどういう意味があるのか。言葉を駆使して広報活動をして、言論活動をやっていくつもりだった。誰かに書いてもらうのではない。自分で書くのである。ネット上で言葉による空中戦をする。WEBだからできる売り方があると思った。
それは実に新しいスタイルだ。

たとえばTwitter実況がそうだった。
今でこそAVメーカーでのTwitter広報は当たり前のようになっているが、自分がやり始めた頃はそこまで各メーカーさんは熱心だったわけではない。写真をバンバン上げだしたのは自分が最初ではなかろうか。

またベイビーのKoolongに頼まれて、制作現場の内側から見るAVレビューを書いたりした。
女体拷問研究所 1st レビュー
この頃は毎週金曜日に「女体拷問研究所」のレビューを書いていた。
よく映像作家の人は映像でしか伝わらないモノがあるという。
しかし言葉で説明することでしか伝わらないモノもあると思っていた。

そのおかげかどうかはわからないが、MotheRsは昔からダウンロードに強い。ネットでの現金収入が馬鹿にならないのだ。

現在、制作スタッフは自分一人になったようなものだし、このだだっ広い事務所で事務机も整ったらいよいよ文章を書くことに明け暮れようと思う。
まずは昔のMotheRsの作品を一つ一つ検証する。
それが自分のスタート地点。
レビューを書いたら、またこのボヤキで作品についてボヤキますかねぇ。

『歩道橋の魔術師』書評 東京猫町倶楽部 豊崎由美書評講座 第1回 

  • [2015/09/20 20:11]

最近はまっている猫町倶楽部では、書評家・豊崎由美さんによる書評講座が行われている。昨年、名古屋猫町で全3回あったのだが、なかなかの盛況ぶりらしく、名古屋猫町のメンバーに話を聞くと実に愉快そうなので、いつかは自分も参加したいと思っていた。
だから東京で8月に開催されると聞いたときは躊躇なく応募した。

書評は昔、官能小説のレビューをエロ雑誌に書いていたこともあり、まったく勝手を知らないということもない。しかしライター業ももう2年以上もしてなく、ブログも更新が滞って長い文章を書くことにいささか不安があった。
だからこそ参加する意義もあるのだが、課題本の1つである『歩道橋の魔術師』を読了し、いざ書いてみる段となるとやはりかなり苦労した。

どうにかこうにか書いて提出したのだが、内容はともかく文章の出来は今ひとつだなぁと思っていた。いちおう記録としてここに載っけてみようと思う。

ちなみに想定媒体は『サンデー毎日』。
死んだ父親が愛読していた雑誌だ。


歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)
呉明益
白水社
売り上げランキング: 67,869

 台湾の話なのに、これはなんとも懐かしい気分にさせてくれる連作小説だ。
 舞台は台北市にかつてあったという中華商場。三階建ての横に長い建物が八棟も列なったこの巨大商店街は、洋服、眼鏡、レコード、食料品、古書、時計、レストランなど千軒以上の店があって活況を呈していた。建物には狭いながらも住居スペースがあり、主に商場で働く家族が住んでいた。
 この小説は、かつてその中華商場で暮らしていた子どもたちにまつわる物語である。現在、大人になった彼らが、当時を振り返る形で語られていくのだが、これによりその時の子どもが今はどういう大人になったのかをさりげなく提示することになる。
 彼らが子どもとして過ごしたのは、一九八〇年前後のこと。
 日本でいえば昭和50年代。高度経済成長から安定成長期に入ったぐらい。バブル景気が始まる前にあたる。ちょうどその頃、日本の大都市近郊では個人商店が密集する商店街が今よりも活気があって、そこから少し離れたところに公団住宅の団地が次々と作られ、大量に流入してくる地方出身者たちを受け入れていった。当時、外国からは「ウサギ小屋」などと揶揄された団地は子どもであふれかえり、今のように少子化が深刻な問題になるとは思いもしなかった時代であった。
 台湾と日本の違いはあれ、同じ時代ということもあるのだろうか。この小説の中で描かれるコミュニティが、その時の団地住まいの雰囲気とよく似ていて、異国の話なのにどうしてか郷愁のようなものを感じてしまう。
 両親の夫婦げんかが絶えない家に帰るのがいやで家出してしまう少年。大して中身はなさそうだが、ギターだけはカッコよく弾く青年を、好きになってしまう美人と評判の娘の話。小学生にしては背が高く、身体も廻りより早く女﹅になってしまって、それゆえに同級生から浮いてしまっている少女の話、かくれんぼをしていたら仕立屋の仕事部屋でその後、秘密にしなくてはいけない事を見てしまう少年の話など、子どもが大人になっていく過程で体験する出来事、見聞する事件などが十篇のストーリーとして綴られている。
 こうやって書くとどれもありふれた話のようにも聞こえるかもしれないが、その読後感は実に見事としかいいようがない。呉明益のストーリーテリングの妙と言ったところか。
 たとえば子ども時代特有の、大人になってからはかなり気恥ずかしいはずの呼び名を、あえて使わせていたり、戦後しばらくして世界的にブームになった切手収集のための切手売りの話を挿れてみたり、ノスタルジーへと誘う芸がいちいち細かい。
 特に表題にもなっている『歩道橋の魔術師』の存在が効いている。商場の棟と棟の間を結ぶ歩行者通路にいつも陣取っているこの謎めいた魔術師は、第1話目以降はあまり登場しなくなっていくのだが、どうやらすべての話の転換点に関わっているようで、その得意の魔術でもって、子どもたちを挑発しいてく。
 魔術師が一人の子どもに言う。「わたしはただ、お前たちの見ている世界を、ちょっと揺らしているだけなんだ。映画を撮る人間がすることと何も変わらない」
 それはいい小説とて同じだろう。呉明益の魔術に、遠く懐かしい子どもだった時の記憶を、呼びさましてもらってはどうだろうか?


全体の3位の支持はいただいた。だけどやはりというかなんというか、豊崎さんからは稚拙な文章だといわれてしまった。
確かにそうだよな。

次回は11月らしいので今から楽しみにしている。

豊崎由美の猫町書評講座@東京 第一回
http://www.nekomachi-club.com/report/24313

開催レポートは、2014年8月2日(日)になっているが、2015年の間違いだな。

深夜というのにシコシコと原稿を書いてます 

  • [2015/09/18 03:39]

昨年ぐらいから始まったのだが、AVSさんでちょくちょく淫語ビデオのお仕事をしております。
明日(というか日付はすでに変わって今日)が撮影日なのだが、まだまだ台本というか淫語原稿ができてなくて、徹夜で臨むことになりそう。
まあ、しゃーない。

ちなみに女優さんは初美沙希ちゃん。実ははじめてちゃんと挨拶をする。

さっきまで彼女が出演した琢斗監督の「淫語中出しソープ」を観ながら、台詞抜きをしておった。
iPhoneで動画購入して鑑賞。昔は「スマホでAVを観るなんて!」 とちょっと思っていたところがあるけど、今ではスマホで一般動画を見ることなんてざらになってきた。AVだってスマホで十分だわ。これからはスマホを意識した動画作りをしていかんといかんと思いますよ。

と、あれほど「書けん、書けん」と思っていたブログも、いったん書き出してしまえば書くことはいろいろ思い浮かんでくるもんだね。
やはり書こうとしないといかんね。
これからは140文字ぐらいしか書くことがなくてもTwitterじゃなくてブログに書くようにするか。
最近、自分の文章がさび付いてしまっていることを痛感する出来事があったので、リハビリがてら書いていくことにする。
もともとブログって日記なわけで、何書いてもいいのである。

そうだ。明日は猫町倶楽部で提出した『歩道橋の魔術師』の書評をそのまんま載せてしまうか。

今は、3:40。
そんなこんなで原稿書きに戻るとする。

夢の間にお邪魔してみた 

  • [2015/04/01 10:39]

淫語AVマニュアルのサーバーを会社の方に移してもらった。
まだ移管中だけど、今月中には新しいサーバーで運用することになる。

マザーズの仕事をし出して、まったく更新ができなくなったわけだけど、今月から試験的にはじめてみようと思っている。
アップする作品はなににするかはまだ決めてないが、漠然と夢野あいださんの作品かなーと思っている。

2月に夢野さんの現場にスタッフで参加して、作品にも女優さんを縛ったりすることになった。
縛るといってもプロの緊縛師さんたちがやるような縛りではなくて、町のオヤジが適当に縛るという演出なので綺麗に縛る必要はない。こっちとしては事故になりさえしなければいいので気楽といえば気楽だったが、女優さんには「本気で抵抗してください」って話していて、実際にかなり激しく動き回るので縄を回すのに苦労した。
普段はおとなしくしている人ばかり縛っているもんだから勝手が違い、緊縛というより捕縛の知識が必要だったのかもしれない。

撮影では、夢野さんはカメラを回しながら手や足を使い、言葉責めをし続ける。
その他に男優さんもいて、自分と3人で道具を使ったりして女性を籠絡、陵辱するという作品だ。

実はそれに近いことを、素人女性でゴールドマンとやりたいなーと思っていて、さきに夢野さんにやられてしまった形になった。
もっとも今回のはそこまで淫語作品ではないので、本格的なのはゴールドマンの時に取っておける。そういう意味ではかなり参考になった。

撮影に入る前に、夢野さんといろいろな話をした。
淫語AVではレジェンドな監督さんだ。やはり楽しくて仕方がない。
あの伝説の「淫語娘」や「淫画ダイナマイト」のことも迷わず聞いた。途中からプロデューサーではなくて、完全に淫語ユーザーモードである。

あの頃、淫語マニアには衝撃をもって迎えられたアロマ企画の淫語作品群だが、なんだかんだいって撮影に2日ぐらいかけているらしい。予算も今より潤沢である。
今は1日撮りが大前提。単体作品ですらそうだ。
企画としては半日でも撮れそうなフェチ系作品だが、あの風見京子や姫咲しゅりの作品ですら2日撮りだったと聞いて、それってどんだけ丁寧に撮っていたことになるのだろうと驚いた。
2日分かけて撮った熱量だ。1日撮りの現在、あれを作ろうとしても端から限界がある。

夢野さんはダンディなオジサンで、声もセクシーなのでもっと陵辱系の淫語作品を作ったらいいと思った。「淫語痴女」はビーバップみのるの独擅場だろうし、M系淫語作品はここ十年、良作が少ないからそれはありだと思う。

とにかくまずは「淫語魔」にもどろう。残された時間は本当になくなってきているようだ。