もっと言論のタマを装填してね。 

雑司が谷に事務所を開設して一ヶ月。
会社的には1人事務所になってしまうということもあって、新事務所はAV監督のK*WESTと一緒に借りることにした。家賃を折半にすることで少し広めの部屋に引っ越すことが出来た。

普段はK*WESTと自分の2人きり。そこにときおり音声のHが編集の手伝いにやってくる。HとK*WESTは大学時代の映画サークルの先輩後輩という仲。Hがこの業界に入ってきたのもK*WESTの誘いがあったからである。
撮影現場での彼はきわめて優秀な音声スタッフなのだが、AVそのものにはさほど興味がないらしい。一度、「監督をヤル気はないのか?」と聞いてみたら、AVよりも映画の方がやりたいそうである。
実はK*WESTの制作会社にいるのも、K*WEST自身がAVにこだわらず映像制作をやりたいと言っているからで、来年は自主映画のようなものを作るつもりでいるらしい。特に映画興行の形態にこだわってるわけでもなく、YouTubeでの無料配信でもいいらしい。
K*WESTもまた映画好きの青年なのである。

とはいえ、この2人はすでに一般映画デビューをしている。しかも役者として。
映画サークルのK*WESTの同期には白石晃士がいて、Hも白石晃士のところで技術スタッフをやっていたことがある。そんな仲だったからということもあるのだろう。3人が出突っ張りの作品がある。


「バチアタリ暴力人間」(2010年公開)

次回、久々にボヤキでレビューを書くつもりだが、自分がこのことを知ってまず思ったのは、自分がこの作品にK*WESTが携わっていることを今にいたるまで全然、知らなかったことだ。2010年なんて、まだいっぱしのヘビーユーザーだった頃だ。しかもAVライターのまねごとのようなことも始めていた。
それなのにまったく覚えがない。
身の回りの映画好きの人間に聞いてみたら、白石晃士の作品ということもあってか「バチアタリ暴力人間」という作品を知るものが意外といて、それなりに知名度があることにさらにびっくりした。

今年もAV業界にとってさらに厳しい年になった。
DVD盤だけ見ると1タイトルにつき1000枚もいかないメーカーがほとんどの状況になってきている。
つまり見方を変えると、AVなんて1000枚売れた売れないの世界ということだ。
たった1000人である。実際にはダウンロード配信もあるのでもっと売り上げはいいのだが、それにしてもそんな程度の市場ということだ。
そんな狭い世界で、狭い世界だけに向けて話をしているというのは、なんと不自由なことなのだろう。外界への目を持たないものの創作物にどれだけの面白味が生まれるというのか。

二村ヒトシの本についてもそれが言える。書籍の世界ではすでに10万部も売れ、たくさんの知識人・言論人とも対談イベントをしているが、AV業界でそのことの意味を知っている人はそんなに多くはない。
國分功一郎も熊谷晋一郎も湯山玲子も枡野浩一もたぶん知らない。
これだけTwitterだのFacebookだのができて、四六時中、発信されているのに、名前は聞いていたとしてもどんな活躍をしている人なのか、よくわかっていない。

逆にどんなにAV業界の中で有名になったとしても、世間的にはまったく無名である。AVの世界なんて、AVのことしか話さない。どのAV女優がエロいだの、どんな企画が売れるだの、そんなのばかりである。
思想も哲学も、文化を創る覚悟もあまり見られない。いや、エロとはもともとそうしたものかもしれない。でもそれでは根無し草のコンテンツになってしまう。

考えてみればボヤキの小窓でやってきたことって、文化的な側面としてのエロを語ることだった。
少なくても自分のやりたいことはそういうことだ。
そうじゃなければ単なるAV屋になってしまう。別にAV屋でもかまわないのだが、単なるAV屋で終わるなら先は見えているだろう。
もっとアンテナを広げなければと思った。
もっと業界以外の人に会わなければ。

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