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 2007年02月 

萩焼のマグカップと直立猿人 

  • [2007/02/18 09:09]

東京は、朝から雨である。
こんな日は、コーヒーを淹れてチャールス・ミンガスを聞きたくなる。

大学の卒業旅行は友人と山口・萩・下関に行った。
友人は歴史好きで、とくに維新の時代は大好物。自分は中原中也が好きだったので、彼の生地を見たくて、それでなんとなく決まった旅だった。

当時はまだMDはなくて、カセットのウォークマン。
『世界の中心で愛を叫ぶ』と同じぐらいの時代背景と考えれば想像しやすいだろうか。

「旅の友に」と持ってきた自分のカセットテープの中には、バイト仲間の後輩が貸してくれたものも混じっていた。
ジャズが好きだった彼の音楽センスはとてもよくて、史跡を巡るのに自分の持ってきたレベッカとかユーミンなんかよりも、パット・メセニーやウエイン・ショーターの方が断然合っていた。
だから旅行中は彼から借りたカセットばかり聞いていた。

特に良かったのはチャールス・ミンガス。
ジャズとかに暗かった自分は、この人の名前を聞くのは初めてで、「とにかく怒っている人です」って言っている後輩の話を「ふーん」と聞き流して受け取った。
人種差別に怒っている人ってことだったんだけど、どういう経緯で怒っていたのかまでは全然わからず聞いていた。

それでも、高杉晋作や吉田松陰のゆかりの地を巡りながら、一番、シンクロしたのがこのアルバムだった。

直立猿人(紙ジャケット仕様) 直立猿人(紙ジャケット仕様)
チャールス・ミンガス (2007/01/24)
ワーナーミュージック・ジャパン

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天気が悪くて、小雨まじりの日が多かった。
もうすぐ社会人になるということで、幾分かの感傷も混じっていた。
せまり来るモヤモヤとした不安も感じていた。

「もう、モラトリアムは終わり」
「子どものいいわけも終わり」

そんな春の山口旅行だった。

だから、今日みたいな日はチャールス・ミンガス。
そして萩焼のマグカップにほろ苦いコーヒー。