ぶり はまち、元はいなだの出世魚 by Wikipedia 

  • [2007/09/15 19:41]

小谷野敦の『性と愛の日本語講座』を読んでいたら、面白い記述があった。

「初店」の客となるためには、格式の高い店では、そのために客は大枚をはたいて準備をしなければならない。それも「見栄」のうちだが、とはいえ、初めてのセックスで痛がる女を客は見たいわけではないらしいのだ。現代人は、「初めて男に挿入される」ことと、「初めて女としてセックスする」ことを同じだと考えているけれど、女郎においてはそうでなかった。男が「水揚げはおれだ」と言って楽しみにしたとすれば、初めて「客になる」ことを楽しみにしたのであって、痛がる女を見たかったのではない。ただ、張形を使っての貫通というのがあったかどうかは、疑問である。ただし明治期以後の遊郭はそういうこともあったらしい。
むろん以上はあくまで遊里の話だから、普通の女の多くは、武家や富豪の娘なら新婚初夜に、下層町人や農民の娘なら結婚前に、「初めて男と抱き合う時」に「破瓜」を迎えたであろう。
「処女崇拝」とかいうものがあったかなかったか、という議論の前に、この点を押さえておくべきではあるまいか。「処女膜(とやら)を破ること」と、「初めてエロティックな行為としてのセックスをする女の恥じらいに出会う喜び」とは、別物なのである。(以下略)

小谷野敦『性と愛の日本語講座』ちくま新書 2003 130p

「処女膜を破る」と「初セックス」は違うという項に書かれているんだが、これってAVにも言えるんじゃないかと思った。

AVで一番、売れるのはまず「初モノ」だろうね。
多くのユーザーは、初々しいセックスが見たいんだよね。痛々しいセックスが見たいわけではない。「初モノ」が見たいのであって「処女喪失」ではないんだな。
もちろん、ジャンルとしては「処女喪失モノ」もあるんだけど、それは淫語ジャンルとあまりかわらないマイナー趣向なわけだ。ピンク板にも総合スレはあるけど、淫語スレ同様の過疎スレだし、こっちとちがってAVの専門サイトもないみたい。

「目には青葉山ほととぎす初鰹」って言葉があるけど、そういう意味では、S1なんてこの路線を最大限に活かし切って作品を作っているわけだ。
まさに「初がつお路線」なんだ。

となるとだ。
単体女優から企画にシフトした女優は「戻りがつお」ってことになる。
こっちの方がキャリアを積んで脂がのっているってわけで、ユーザーは女優さんに企画作品として質の高いものを求めていたりする。

自分は好みのタイプなら初モノもキライじゃない。実際、買っちゃってるしなぁ。
去年なんか荒井美恵子を予約して買ってしまったからねぇ。
ただその時も思ったけど、最低限ちゃんとセックスはしてほしいよね。
グダグダなのはいらない。それは売り物にはならないでしょ。

んっ? そうなるとキカタン女優は出世魚ってことか?
長瀬愛ちゃんや乃亜さんなんかはそうだよね。


話は変わるけど、さっきまで多摩一帯の民俗の本を読んでいたのね。そうしたらこんな歌を見つけた。

郷地福島 女の夜ばい
男ごしょらく 寝て待ちる

(注)話者は福生市で糸とり工女をしていた。郷地福島は昭島市であるが、そこでは昔から女性が夜ばいをする習慣があったという。仕事しながらよくうたったとのこと。

府中市立郷土館編『府中の口伝え集』府中市教育委員会発行 S61.3.25 372p

もう少し解説すると、「ごしょらく」というのは、「後生楽」の転訛で「のんきに」とか「お気楽で」みたいな意味。つまり男の方が、女が夜這いをかけてくるのをお気楽な気分で寝て待っていたってことだね。
この「郷地・福島」というのは東京の昭島市にある地名なんだけど、今でもちゃんと存在する場所。
夜這いの話は民俗学者の赤松啓介がさんざん語ってたけど、女性の方から夜這いするっていうのは初めて聞いた気がする。

女の夜這いがあるってこと、猫猫先生は知っているのかな。
まっ、あの人なら知っていてもおかしくないわけだが。