いろんなAVライターに影響をあたえた一冊 

  • [2010/10/18 23:59]

えっーと発売日と同時に買いに行った東良美季著『AV黄金列伝』の話をしようかと思ったんだけどボヤボヤしている間にやりたかったことを安田理央さんにやられてしまった。

[本][AV]「AV黄金列伝~ワタシは、どうして、あの場所に、いたんだろう。」
http://d.hatena.ne.jp/rioysd/20101018

なにがやりたかったかというと、『アダルトビデオジェネレーション』と収録している人の差異を書こうと思っていたのね。

「アダルトビデオジェネレーション」からは、加藤鷹、辻丸耕平、卯月妙子、風吹あんな、カンパニー松尾、高槻彰、中野貴雄、斉藤修、平野勝之、シンプル SANO、バクシーシ山下、井口昇、平口広美、豊田薫が外されて、太賀麻郎、笠木忍、南佳也、森下くるみ、林由美香が加えられたということになりますね。

東良さんがカン松やバク山さんを語らないはずがないので、おそらくそのあたりの人たちは別の形で文庫化する気なのだろう。

新しく掲載されている魅力的な男優、女優さんたちもいるから『アダルトビデオジェネレーション』を持っている人でも買った方がいいとは思うけれど、実はよく読んでみると残った人たちのインタビュー部分も加筆されていたりする。

淫語AV史にとっても貴重な証言が載っているヘンリー塚本監督のインタビューの一部を比べてみよう。前者は『アダルトビデオジェネレーション』、後者は『AV黄金列伝』ね。

「斜めの罫線の入った便せんをデザインしたのもその頃なんです。右上がり十二度の角度だととても書きやすいんですね。洋裁の仕事のかたわらそれを印刷所に発注して、出来た商品を売り歩いたんです。全国の問屋を歩きました。北海道から九州までね。東京では伊東屋さんと東急ハンズが置いてくれました。苦労? そう、しましたね。恥もかきましたよ、何せ文房具のことなんか何もわからない素人ですからね。仕事が終わってから、いつも夜中まで女房と話し合っていました。『何かもっといい、やりがいのある商売は無いだろうか』『もっと今の時代に合った、新しい商売は無いだろうか』と」

東良美季『アダルトビデオジェネレーション』メディアワークス 1999.11.20 430P

「斜めの罫線の入った便せんをデザインしたのもその頃なんです。右上がり12度の角度だととても書き易いんですね。洋裁の仕事の傍らそれを印刷所に発注して、出来た商品を売り歩いたんです。全国の問屋を歩きました。北海道から九州までね。東京では伊東屋さんと東急ハンズが置いてくれました。苦労? そう、しましたね。恥もかきましたよ、何せ文房具のことなんか何もわからない素人ですからね」
「ええ、そうです。洋裁はもうだめでした。もう時代遅れの商売だったんですね、全然、話にならない。結局のところ言わば下請け仕事です。これで良いのだろうかといつも思ってました。俺の人生は、一生下請けでいいのだろうかってね。それに10年洋裁の世界に居て、その業界のつまらなさというのでしょうか、狭さをつくづく感じていました。たとえば洋裁仲間の集まりに出ても、出る話といったら『工賃が上がらない……』そればかりです。映画の話なんて通じる人は誰もいないんです。仕事が終わってから、いつも夜中まで女房と話し合っていました。『何かもっといい、やりがいのある商売はないだろうか』『もっと今の時代に合った、新しい商売はないだろうか』と」

東良美季『AV黄金列伝』文庫ぎんが堂2010.10.11 150P

赤くしたのが付け足された箇所。
あと、よぉーく見ると漢数字が英数字になっていたり、いろいろ文字の変化がある。
ついでにいうと『アダルトビデオジェネレーション』の方は誤字・脱字がとにかく目立った。正直、自分はお粗末な体裁だとすら思っていた。
でも今回はそういう意味では気になるところはなかった。

東良 美季
イースト・プレス
売り上げランキング: 20104

まあとにかく読んでみてよ。
この本は「読み物」として抜群に面白いから。