淫語とは何か -5次元淫語の発見- 中編  

  • [2012/01/11 00:01]

三次元淫語

さて淫語には発話者がいる。発話する者はどこかに向けて発話しているはずである。
自分はこれを大きく二つに分けた。すなわち明らかに誰かに聞かせるための淫語を痴演淫語、誰に対してというわけではなく思わず出てしまった淫語を痴悦淫語とした。

痴悦淫語というのは、「オマンコ気持ちいい!」といったような独白淫語だ。
独白というのは自分に対して言っているだけでもないだろう。思わず出てしまうものもある。その無意識に口からでた言葉を認識することで、自分の感情に気づかされることは大いにあり得ることだ。

言葉というのは、コミュニケーションツールであると同時に、自分の考えを明確にする道具でもある。また「自分の言葉で語る」という言い回しもあるが、実際のところ、言葉そのものは自分以外の誰かが考えたものである。つまり他者がいてはじめて存在するものであり、ほとんどの場合、子どもの頃に社会の代弁者、たとえば母親などからインストールされたものである。

したがって何かを言葉にした途端、それはいったん自分という意識体から離れ、意識の外にもう一つ別の自分を作り出すことになる。
思わず出た独白の場合、その言葉は、あるいは願望であったり、感情の吐露であったり、場合によっては暗示であったりするかもしれない。祈りの言葉、神のようなものに聞かせるためのチャンティングである場合もあるだろう。

性的な行為のときに、気持ちよくなっていってわけのわからない言葉を口にしてしまう人がいる。実際の撮影でも、女優さんにオナニー中、「おまんこ」を連呼させて理性の歯止めを飛ばした女優さんがいた。
そういうところに女の生臭さを感じ、ものすごくエロいものを見た気分になることがある。
それは淫語の醍醐味の一つである。

このように痴悦淫語も語り出せば奥が深いが、問題は痴演淫語の方だ。こちらはいろんなパターンが考えられる。
発話対象は、目の前にいる相手、特定少数、不特定少数、不特定多数。
能動であれば痴女性がでるし、受動であれば強制淫語ということになる。

また淫語の発話形式も、講演、演説、告知、朗読、討論、命令、叱責、指導、対話、会話、挨拶、告白、懇願、懺悔、つぶやき、絶叫、ボヤキ、反応とそれぞれだ。

もっとも痴悦、痴演とわけるにはわけたが、実際はかぶっている場合もある。
相手に対して言っているはずが、言いながら自分も興奮してくることがあるだろうし、思わず出てしまった言葉だったのが、相手がそれを聞いているということがわかり、ますます拍車がかかるということもあるだろう。

言葉というのものが、どこかに向けられて発せられている以上は、誰がどういうつもりで言っているのかを意識していないのはおかしい。
相手に対して言っているのか、自分に言っているのか、モノに話しかけているのか、祈りに近いものなのか、そういったことによって声のトーンやリズムは変わってくるはずで、そこを意識すれば、「おちんちん」か「チンポ」かの選択もその人のキャラなりに連動してくるはずだ。
たとえばM男性を使ったS風痴女淫語なら「なんだこれ、包茎チンポかよ。しょっぼいなぁ。なぁチンポ、こんなんで私にどうしろっていうんだよ」というかもしれないし、癒やし系の母性たっぷりな痴女なら「あらら、皮かむりのおちんちん。亀頭が隠れちゃって、かわいい。ほぉら、ゆっくり剥いていきましょうね」というかもしれない。

こういった発話者の態度を意識した淫語を3次元淫語と呼ぶことにしよう。
これは位相の違いなので、1次元淫語も2次元淫語も、3次元淫語の要素として扱われる。

四次元淫語

特にドラマものなどで顕著なのだが、たとえば教師と生徒との関係なら、それぞれがそれに見合った背景を背負っているはずである。当然、それに沿った台詞が出てこなくてはおかしい。したがってAVでもドラマ部分に関してはきっちりとした台本が用意されていることも多いが、カラミに関しては、これだけは言ってほしいというマストの台詞はあるが、あとは基本的に女優や男優のアドリブまかせになってしまうのが普通である。
もちろんFAプロやサイドビーのように、セックス中でもカット割りをして台詞をつけるところもあるが、それだとお芝居臭くなってしまうし、擬似でのカラミならまだしも、本番の場合、男優の勃ち待ちの危険性だって出てくる。そもそもカラミに台詞はどうしても必要なのかということを考えると、あまりきっちり書くことはそう多くないのかもしれない。
むしろ細かいところは、女優と男優に任せた方が自然なカラミになる。
そうなるとあとは演技力次第。

淫語作品の難しいところはこういうところで、カラミ中に淫語を言うのは必須である。
となるとどこまで監督が指示をし、どこまでマストの台詞を決めておくか、あるいはどこまで女優や男優にまかせるか、そのあたりが問題になってくる。

もっともマストの淫語の言う場所はだいたい決まっている。
冒頭導入部、性器露出時、手コキ指マン開始直前、フェラ・クンニ開始直前、マンぐり・チンぐり時、挿入直前・直後、別の体位への移行時、発射の意思確認、発射後の感想。
たとえば、もしも童貞生徒と女教師の関係なら、女教師が童貞のおちんちんに注意を向けたとき、女教師と童貞生徒の関係を意識した淫語台詞があってしかるべきだ。

しかしここだけ言えばいいかというとそうもいかない。
上手い痴女女優は、このポイントとポイントの間をうまく言葉でつないで盛り上げていくことができる。そこに差が出てくるのだ。
そのときに、自分が女教師であること、相手が童貞の生徒であることを忘れてもらっては困る。それだけでなく、いろいろなストーリーを抱いて、そこに台詞を乗せていかないと単調に聞こえてくる。

たとえば「山田君、授業中、先生の口元ばかり見てたじゃない? 知ってたのよ、先生。ねぇ、ほぉーら、女の人に咥えられてどう? おちんちん、先生のお口、気持ちいい? 本当は先生も前から山田君のおちんちん、舐めてみたかったんだぁ」ぐらいの小話をちょいちょい入れられる女優は最高である。これができないボキャブラリーの少ない女優だと聞いている方は飽きてくる。おそらく言う女優だって飽きてくるはずだ。
一方、できる女優はイメージがどんどんわいてくるのであろう。
そのリアリティーにその女優の言葉によって作られたエロ空間は渦を巻いてさらに場を盛り上げていく。優れた女優はまちがいなく言葉で場を制しているのである。

今のは痴女の例だが、これは男が女性を言葉責めする陵辱作品でも同じことだ。
下手なSMビデオの言葉責めは、男優(もしくは監督)のこういうセンスが弱いのである。

このエロ空間を読みながら、淫語を使って独自の世界に引き込んでいく。そのような淫語を4次元淫語ということにしよう。
台詞も単に「マンコが気持ちいい」とか「チンポが勃ってる」とかだけではなく、「ああいいわ、あなたのおちんぽ、すごーい、すごーく反り返ってる。ああ、すごーいステキ。ああっすごいわぁ。ああ、おまんこにぃ、先生のおまんこにあたって、先生のおまんこも溢れちゃうぐらいよぉ。ねぇ、あなたの童貞チンポ、ヌルヌルしてるとこ、ねぇ、くっついちゃってるわよ。ああステキぃ」ぐらいのことは言ってくれるはずだ。

ときどき、どういう人が淫語のうまい女優かと聞かれることがあるが、自分はいつも言葉でオナニーができる人とこたえていた。それは結局のところ、独自のエロイメージを持ち、それを言語化で出し入れできる人ということだ。言葉を使うことでイメージがはっきりしてくる。そして言葉は次の言葉を生み出す。それにともない、イメージはどんどん広がっていくのである。

そういった意味で、淫語のうまい女優は4次元淫語を体得している人だというのが、当初の自分の抱いていた仮説であった。
イメージの広がりを持つ4次元淫語は、3次元淫語を誘導するのである。
そしてこれは高次元になるごとに、どんどん淫語の特殊性が消えていき、普遍的なエロスに近づいていっているようだ。
このボヤキで淫語からエロスを考えていけるのではないかと言ってきたのはこういうことである。

以上、これらをもとにMotheRsの撮影で「淫語トレーニング」なるものを開始した。
女優さんに、まずは1次元淫語としていろいろな種類の男性器・女性器を言わせ、2次元淫語として簡単ないくつかの淫語の修飾句を言わせ、3次元淫語として実際にAVの中で言っている抜き出した台詞を言わせてみる。それがうまく言えれば、その女優さんは4次元淫語を理解していることになる。

ところが、どうもそれだけだと4次元淫語の有り様がはっきりしない。
AV女優さんというのはすごいもので、それなりに現場をこなしてきた女優はそれなりにいやらしく言えるのだ。

そこで思案の末、淫語魔自作の官能小説を読んでもらうことにした。
濡れ場の朗読がうまい女優はきっとすぐにストーリーに感情移入ができるだろう。言葉に興奮して盛り上がってくれるに違いない。
台詞とは違って、地の文章である。状況説明など客観的な視点も失ってはいない。
まずは空間を認識して、登場人物の心情をだぶらせ、その中で淫語の会話文を読ませみる。
それが迫真の言い方で読めさえすれば、まちがいなく4次元淫語の使い手と言えるだろう。そこで差がはっきりするのではないか。
そう思った。

(どうやらまだ続く)