淫語とは何か -5次元淫語の発見- 後編  

その日はMotheRsの『オナクラ』の撮影日で、3人の女優を撮り下ろすことになっていた。
3人とも淫語台詞に関してはそれぞれがエロく言えていたが、やはり官能小説を読ませる段階でその違いが歴然となった。その中の一人が図抜けていたのだ。
他の二人はそれなりにうまくはあったのだが、やはりどこか文字に読まれているようなところがあった。だがもう一人の女優さんは間の取り方から、声のトーンから、いっぺんにその場の空気を自分色に染めていった。
彼女の方も自分で作ったエロ空間の渦に呑み込まれながら朗読していたようだ。

その後、それぞれの撮影をしていったのだが、案の定、その女優さんはものすごいパフォーマンスを見せてくれた。二村監督の言うことに対して大変高い理解力を示し、自分なりのイメージを作って淫語オナニーを披露した。
監督の言いなりになるのではなく、彼女なりの解釈で一緒にその作品を作ろうとしてくれていたことが明らかだった。

これで気をよくした自分は、その後も機会があるごとに「淫語トレーニング」で何人かの女優に朗読をさせた。
たまたま女優さんたちに恵まれ、すばらしい朗読劇をやってくれた。
そして、彼女たちのパフォーマンスは『女神降臨』でも、『男魂快楽地獄責め』でも非常にいい働きをしてくれた。

それにしても、なぜうまい下手があるのだろう?
聞いていると明らかに違いがある。それはいったいどういうことはなのだろう?
そこで自分は考えた。
そこに明らかに位相がある。4次元淫語が3次元淫語を誘導するのなら、4次元淫語を要素とした5次元淫語があってもおかしくないのではないか。

自分は当初「淫語のエキスパート」としてMotheRsに参加した。今、使っているMotheRsの名刺にも「演出・淫語監修」という肩書きがついている。
淫語のうまい女優さんは放っておいても勝手に独自の世界を築いていく。そういう人には自分の出る幕はあまりないかもしれない。
問題はあまりうまくない女優が出てきたときだ。その女優さんに淫語のすばらしさを教え、淫語女優として開眼させるのは自分の役割ではないか。

AV女優さんでも突然、淫語が上手くなる人がいる。そういう人を見ると、いったい彼女の中にどういう変化が起きたのか、不思議に思うことがあった。
そのメカニズムがわかりたい。せっかくそういうことを確認できる場所にいるのだから、言葉エッチの正体を知りたい。どうせなら淫語のエンターテイメントを極めたい。

何人かの女性に淫語官能小説を読ませてみて、そこに何かあるのはわかっていた。
しかしそれがなんなのかよくわからない。実はこうして書いている今でもわかってはいない。

昨年の12月にあの伝説の淫語女優・風見京子さんに「淫語トレーニング」をやる機会があった。
ただし撮影時間の段取りを考えると、それを決行する隙間がなかなか見つけられずにいた。最後までやるかどうか迷って、トレーニング用の原稿を渡せずにとうとう風見さんが帰る時間になってしまった。諦めきれなかった自分は、なんとか風見さんにお願いをして、無理をいってカメラを回させてもらった。
したがって原稿は、やる直前に渡すこととなり、初見で官能小説を読んでもらうことになってしまった。

他の淫語トレーニング自体は大変に貴重でいいモノを聞かせてもらったのだが、肝心の朗読になって、やはり思ったほどの成果がでなかった。
風見さんはそれなりにうまかったのだが、初見のせいでどうしてもつっかえつっかえになってしまう。さらにこちらのミスで脱字がみつかり、そこでも混乱をさせてしまった。
焦ったのは自分だ。ただでさえ憧れの女優を目の前に緊張しているのに、こちらの失態でさらにおかしなテンションになる。
風見さんには申し訳ないことをした。明らかに配慮が足りなかった。

それまでの「淫語トレーニング」はいったんは女優さんに原稿を渡してあるので、少なからず目を通してもらっている状態であった。またトレーニングを始めるときも、女優さんに官能小説の内容を軽く説明したりしていた。
ところが風見京子さんにはそれができなかった。
何の説明もない中、読ませればたとえあの風見京子をしても、自分の世界に取り込んで朗読することは無理であろう。

ある意味、これは一つの証明になっている。文脈を読み取る力が場を制する。言葉で場を制するのが、4次元淫語である。
でもどうして文脈が読み取れるのだろう?
逆にどうして文脈が読み取れない女優がいるのだろう?
そもそも文脈を読み取るということはどういうことなのだろう?

実際、風見さんはそれなりにうまい朗読をしてくれた。決して下手ではない。
風見さん以前の、「それなりにうまい女優さん」たちは、事前に原稿を渡し、ひょっとしたら控え室で少しぐらい練習をして臨んだかもしれない。
でも、それなりにうまく読むことはできても、自分独自のエロ空間をつくり上げることは、まったくできていないわけではないが、難しいようだった。。
一方、風見さんのように撮影ではこちらの要求以上のことをしてくれるような人でも、初見の原稿で何も説明を受けずに読んでしまえば、うまく読むだけにとどまってしまう。
これはまるで微分積分のような状態になっているわけで、このあたりに5次元淫語らしき位相空間があるのではないかと考えたりした。

ここでずっとモヤモヤしている。
まだなにか見落としているところが間違いなくあるのだ。
それでずっと解を求めて、共通項を探している。

淫語のうまい人は、しゃべり方がいい。
淫語のうまい人は、語彙が豊富。
淫語のうまい人は、表情が豊か。
淫語のうまい人は、妄想力がある。
淫語のうまい人は、擬音に特徴がある。
淫語のうまい人は、助詞の使い方がユニーク。
淫語のうまい人は、文字情報でオナニーができる。
淫語のうまい人は、ペットに話しかけたり、人形に話しかけたりする。
淫語のうまい人は、読書家である(あった)。
淫語のうまい人は、マンガ好き。
淫語のうまい人は、ときどきオノマトペを口にする。
淫語のうまい人は、実はオタク。

幸運なことに、今は実際にAV女優さんたちに会って確認できる。
そしてほとんど当てはまる人が多い中、ときどきまったく当てはまらない人もでてくる。しかしその人もAVを見る限り、淫語がうまい。
いくつか思うことはあるのだけれど、まだボヤキに書けるほどにはいたっていない。
むしろ、今後の撮影の中で、これらのことがわかってくることを期待したい。
というか、わかりたい。

今までは、「そんなことを考えてAVを見ているヤツは他にいない」ということでボヤキの小窓を書いてきた。
これからは「そんなことを考えてAVを作っているヤツは他にいない」ということでボヤキに書いていく。
それで最終的には理想の淫語作品を作って淫語魔は終了する。

一言、「満足した」といえば、メフィストフェレスが連れてってくれるだろう。
あるいはグレートヒェンか。
それなら、まさしくMotheRsじゃないか。

コメント

突然のコメント失礼致します

淫語を勉強しようと色々検索していたら
このブログを発見しました。

読んでいて面白いし、とても勉強になります。


これからも学びつつ、楽しく拝見させて頂きます。
m(__)m

絹江さんへ

淫語の世界に興味を示していただいてありがとうございます。
私は根っからの淫語好きなので、一人でも多くの人が淫語エロスに理解を示してくれれば幸いです。

気軽に所感を書き込んで見てください。

淫語の上手い人下手というのは確かにあると思いますが
たぶん素養や性格が十人十色であるように、人によって演出も変わると思います。
例えば昔、ツーショットダイヤルというのがありましたが
タイプによってスイッチの入りどころは実に様々だと実感しました。
ある意味、音楽のアドリブ演奏に似たところがある気がします。
ゴールドマンやD児等、音楽好きが淫語の名手だったように。
相手の女性の本質を瞬時に嗅ぎ分けて、ツボをつくというのは容易くないですが、
ひとつ言えると思うのは、こちら側が冷めていると
女性側も絶対ノってこないというのはあると思います。
そういえば二村監督は昔、パケに「監督(撮影中チンポさわってた人)二村ヒトシ」みたいなクレジットありましたが、あんな感じで今度淫語指導してみたらどうでしょう。^^

ライブ感覚

それこそまさに四次元淫語ってやつで、ゴールドマンでもD児さんでもミネック監督でもいいんですが、出演者はそのときの空気を読めないといけないってことです。
それは演出する側にも言えるでしょう。監督やあるいは視聴者すら参加者と言えるのかもしれない。
なんか量子力学みたいな話ですけど、でもまさにそこを問題にしているのです。

それで今、ノウハウを集めているところではあるんですけど、少しずつ、かつて淫語ビデオ撮っていた監督さんたちと会ったりしていろいろ聞いてみたりしています。なかなか面白いことが聞けていますが、考えてしまうところもあります。
一つにはインカムを使っての撮影で、無線で飛ばしながら言わせるやり方を有りだと言う人もいれば無しだという人もいます。
具体的な作品については言及しませんが、実は淫語マニアの中では、評判のいい作品もアドリブではなく、いろいろ工夫されているものがあります。
確かによく聞けばナチュラルな淫語ではない箇所があったりで、この辺はファンタジーなので、ユーザーがわからなければいいのかなぁと思ったり。

二村さんは完全にガチンコなので、インカム無しでいつもチンコをいじりながら淫語台詞をつけてますね。
当意即妙の演出や淫語に関してはマザーズの作品は全部、二村さんがつけてます。
私は今のところシナリオを書いて本番前の打ち合わせで淫語をつけるのみなのですが、監督をするとしたらどちらかというと用意周到なゴールドマンタイプなのかもしれませんね。

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