みんながみんな「おねマス」なわけじゃない。 

  • [2009/04/10 21:57]

ああ、できれば明日アップして久々の週3の更新にしたかったのだが、明日は急に外出しなきゃいけない予定が入って作れないのであった。
今夜は、ちょっとした宿題を今日中に片付けたいので、更新用の作品を見ている時間がない。確実に来週だな。

今日、これ買ってきた。

名前のない女たち最終章 セックスと自殺のあいだで
中村 淳彦
宝島社
売り上げランキング: 49238
おすすめ度の平均: 4.5
5 壮絶です
4 名前のない女
5 泣きました

さっきちょこっと読んだんだけど、「目次」見たら読後の感想なんてとても書けそうに思えない。
とりあえずAmazonに目次が載ってなかったので、ラインナップだけ列記しておくわ。

  • まえがき
  • 消えることのない血の怨念 山崎アジコ
  • ゴミ屋敷に生きる女 夕張めろん
  • 壊れないオモチャになりたい ぴぃ
  • あたし、けっこう終わってるから 島谷聖羅
  • 足立区の美人局とダラしない女 名波ゆら
  • 厚塗りの化粧した女がやってきた 北崎未来
  • 一生カラダを売り続けなければならない 高橋ゆりか
  • ロリコンパーティーで輪姦されてパパから十万円もらった 福橋由芽
  • 肉便器と呼ばれた女 山形チェリー
  • 取り残される不安、孤独な焦り 美咲沙耶
  • 一日十発セックスしたら学校なんて行く気にならない 大沢佑香
  • 生と死、境界線を生きる女たち 桃色まあち、桜一菜
  • エピローグ
  • あとがき
「まえがき」からして、いつも以上に色調が暗い。

 二十数年前、産声をあげたアダルトビデオはあらゆる隙間に挑戦して、遂に芸能人のみをキャスティングするメーカーまで現れて、表現的には最終地点まで到達してしまった。書店売りは淘汰されてコンビニ流通で首の皮が繋がっていたエロ本は、もはや終焉が秒読みとなっている。どんなメディアも頂点を掴んでしまった後は、下降と悪化の一途を辿るのみである。お客はどんどん離れて市場は急激に狭まり、すべての関係者が限界まで定価を下げて生き残りを図るデフレ状態となり、苦しみながら生きていた。

中村淳彦『名前のない女たち最終章』宝島社2009.4.24発行 1p

そして中村は「メディアは人間の足を引っ張ることはあるが、決して人を救うことはできないと悟ってしまって、この『名前のない女たち』は苦痛でしかなくなっていた」と自分の心境を吐露する。

 現在、芸能人までが登場するようになったアダルトメディアの中で、企画AV女優はもはや無価値に等しい存在になっている。よほど美しいか性的に成熟してない限り、自分の生活を支えるだけの貢献をすることさえも困難である。アダルトビデオの仕事がお金になるというのは完全に過去の産物であり、フラッシュバックした幻覚であり、女の最終手段ももはやメディアに売ることはできない。最終手段を売ることを決意したにもかかわらず、その現実を知らないまま蠢いている企画女優は底なし沼の世界になっていた。
 ピリオドのその先へ――自分自身の限界を超えたボクは、本当の絶望を見ることになった。

中村淳彦『名前のない女たち最終章』宝島社2009.4.24発行 3p

相変わらず中村淳彦の文章は健在だ。
この人の特徴は読者に「そんなことはないだろう」「それは言い過ぎだろう」という気分にさせていく。そういう読者の反駁心を使って話に引き込もうとするのだ。
それがこの人の文才であり、それがまた人によって生理的な嫌悪感を引き起こし、業界内部にいらぬ敵を作るわけでもある。

でもこれは昔からある文章技術の1つである。
たまたま店頭で「まえがき」を読んでしまった読者は、たとえ買わないにしても、「こんなことを書きやがるヤツは女優の何を知って言いやがるんだろう」と店先で斜め読みぐらいはするかもしれない。
この芸はそうそう余人の真似できるものではない。まぁ、真似したくもないが。

いずれにしろ、これが最後というのはかなり残念でもある。
ただ終わる理由が「オレンジ通信」の廃刊からくるものなわけで、そういう意味では『名前のない女たち』は時代を馳せたエロ雑誌の死亡とともに終わったのだ。